2015-03-15

I'VE GOT A FRIEND.



その昔、20代も終わりの頃、
いろんなことがすっかり嫌になって、
自分自身にもうんざり嫌気がさして、
リセットしようと思ったことがある。

自分を知る人のまったくいない場所で
言葉もうまく伝わらない環境で
今一度自分自身に向き合って
自分自身と語り合って。
自分になにができて、できないのか。
自分がいったい何者なのか。
遅れてやってきたアイデンティティークライシス。

再び教員を目指して大学に入ったものの、
これまた掛け違えたシャツのボタンのように
なにもかもがうまくいかず
寝れない日が続いて、大学をスピンアウト...。
おんぼろの66年式のビートルにサーフボード積んで
バックパックひとつの荷物であてもなく南へ向かう。
サーファーズパラダイスという名前にただ惹かれて。

途中いくつかのかわりばえのしない町に立ち寄り
かわりばえのしないユースホステルに泊まり波乗りして
かわりばえのしない食事して。
そうこうして僕はゴールドコーストにたどり着き
そこでひとりの笑顔のとびきりチャーミングなおとこと
出会って友達となった。


彼はトライフィンのショートボード、
僕はシングルフィンのロングボード。
行きたいポイントが違ってふたりとも譲らないから
一台の車で違うポイントに入ることもよくあった。
やたらに怪我するおとこで
サーフトリップでは初日から頭を縫う怪我をするし、
足をフィンで切って歩けない彼を長い距離おぶってやったこともあった。

波乗りの後にグリーンマウントのマクドナルドに寄って
一杯1ドルのコーヒーと25セントのソフトクリームを
買うのが決まりのサーフバムだった。
半年位、毎日のように波乗りして笑って、
トムとジェリーのように仲良くけんかした。

明日のことも考えず、子供の頃の友達のように遊びたおした友達。

その後、
彼はハワイへ向かい、
僕はカリフォルニアへ向かった。


時はたち、それぞれまっとうに会社勤めした後、
僕は神戸でメンズショップを開き、
彼は昨年東京の仙川でカフェを開いた。

東京への展示会出張で、
すこしばかり足を伸ばして彼の顔を見に行く。
僕にとっては知らない街で彼との久しぶりの再会。
時は変わり、
話の内容は波の話しからビジネスの話しとなったけど、
笑顔のチャーミングさは相変わらずだった。

お店のことを熱く語る彼を見て、
そのがんばってる姿を見て、
僕はうれしかった。

店が落ち着いたら、
またふたりでオーストラリアにサーフトリップしようなと約束して店を出る。

いいんじゃないかな、
ええ大人になっての思い出の地へのサーフトリップ。


そうだ。僕もがんばらなきゃ。



   LARGO SENGAWA

CLOSE ON MONDAY





BGM: YOU'VE GOT A FRIEND / JAMES TAYLOR & CAROLE KING