2015-10-28

秋の夜長はギル・スコットヘロン。




秋の気配が深まってきて、
心地のいい音が鳴っていると気分もいい。
それがその時の気分にあった音楽でもいいし
風の音や虫の音でもいい。


先日、波乗りの後、
いつものように仲間と温泉に入ったあと
食堂でゆっくりしていたときのこと。
テレビから流れるとある若い女性歌手の声が気に障って仕方がなかった。
普段ならやりすごしてしまうのだろうけど、
その高い音域でゆらぎのない声に僕が我慢しきれず,
箸でテレビ画面を指差し、
だれ、この娘?
これってみんな聴いてて気持ちいいの?

結構、若い子らには人気らしいですよ。と友人。
高い声のほうが売れるらしいですよ。もうひとりの友人がつづく。

うーむ...。

こんな磨りガラスを引っ掻いたような細身でヒステリックな声が...。

日本人は高音が好きなのか。

僕の記憶の中の子どもの頃のアイドルは、
もっと肉感のある低い声で歌っていたし、
音域がもっと広くて揺らいでいたように思う。

いつのころからこんな高くて狭い音域の
キンキンした歌い手が幅を利かせてるのだろうか。
声変わり前の子どもの歌うキッズグループのように
カン高い音域一発勝負みたいな。

その国その国独特の音階や音色ってあるんだけど、
歌謡というカテゴリーの日本標準音楽は
完全に独自の進化をとげていて、
まさにガラパゴス状態。


家に戻って、
ギル・スコットヘロンを聴きながらほっとする。
その昔、たまたま旅行中のロンドンで、
彼のポエトリーリーディングのライブにいったことがある。
朗読自体はほとんど何のことかはわからなかったけど、
最後にエレピの弾き語りで数曲歌ってくれた。
その声出し一発で僕のこころは震えた。
すこしはちびっていたかもしれない。
声そのものが楽器。
こんな声、
ほかにはトム・ウエィツやレナード・コーエンくらいしか思い当たらない。


lotus california  たなかひろし

その昔、
海外のスピーカー設計者が日本のスピーカーを試聴したときに
そのカン高い音色に驚いて
日本人はもっと西欧の音楽を聴いたほうがいいといったらしい。
イギリスのとあるメーカーの社長も日本のメーカーの音を聴いて
特定の音域、特に高い音域にピークのあるその音質を
アグレッシブな音と評したらしい。
低音がぬるくて高音が攻撃的
まさに日本の歌謡を表現するにはぴったり。

とはいえ、
イギリスのスピーカーはそれはそれで独特、
高域が伸びきらずに中域にピークのある音。
それはそれで味のある音でなるけどね。
お国柄ということか。
イギリスに行ったひとならわかるだろけど、
イギリス人はもっと味覚を磨いた方がいいとおもう。
なんであれほどうまくないものばかりなんだろうかと。
中華とインディアン以外たいしたものがない。




2015-10-21

LIFE WITH A OLD CAR.





日本は旧車には厳しい。
ただでさえメンテナンスに時間とコストがかかるのに、
古い車は高い税金を払わないと維持できない。
自動車関連産業が日本の主たる産業なので、
あたらしい車をジャンジャン買ってもらわないと困る訳である。


あたらしい車を作るためにたくさんの資源を消費して、
CO2をどんどん排出して、
製造にどんどん電気を使い、
廃棄された車を処分するためにたくさんのエネルギーを消費して、
またたくさんのごみを作り出す。
このくりかえし。

古い車を大切にして
レストアしながら乗るほうがよほどエコロジーだと思うんだけど。

まあ、僕ひとりがここで声を荒げて拳を振り上げても
体制には影響ないんだけど...。
ちなみにドイツでは30年以上たってコンディションのいい車は
Hナンバーを習得しヒストリックカーとして税金は免除される。
さらに保険の優遇も受けれるらしい。
つまりは古い車を維持することが
文化遺産の継承とみなされるから。
同じくイギリスやスイスなど文化度の高い欧州では、
こういったヒストリックカーを文化遺産として扱う制度が存在する。


さて僕のキャンパーも車検がやってきた。
手に入れてはじめての検査なので
ゴッドハンドに念入りにチェックしてもらうことに。

1を訊けば10答えてくれるゴッドハンド。
今回も左リアブレーキの取り付けが180度違っていたとか
右フロントライトの取り付けも逆さまで光軸があっていなかったとか
鬼の首をとったかのように嬉々と説明してくれる。
なにも訊かなくてもずっとしゃべってるけど。
僕はこのゴッドハンドとのおしゃべりが好きで
神戸から千早赤阪村まで2時間掛けてやってくる。

新車のディラーとは違うこういったサードパーティーが
実は車文化の担い手であるのは
欧州もここ日本も同じ。


僕のキャンパーも無事に検査を済ませ
またひとつ自分の車になったような気がする。
はじめのうちどこか借り物のように感じていた車も、
ちょっとしたトラブルごとに、
検査ごとに手を入れることで
着慣れたやわらかいネルシャツのように
自分の肌になじんでくるような気がする。


lotus california  たなかひろし



2015-10-06

きついレコード。 HYMNS SPHERE / KIRTH JARRETT



いまでもときどきレコードを買って失敗することがある。
いわゆるジャケ買いでの失敗は、
壁に飾れるからまあ良しとして...。

きのう買ったレコードは人生最大のきついレコードだった。
ECMレーベルなんでオルガンというタイトルでも
ハモンドではないのはわかってたんだけど。

内容が実にきつい。

暗い、重い、つらい感じのパイプオルガンのソロが延々と続く。
人生のあらゆる種類の悲哀がたばになってこれでもかと
天から自分目がけて降り注いでくる。
加えて、地中からもなにものかに引きずられてずぶずぶと沈んでゆく感じ。
これほどレコードの片面が長く感じることはない。
がんばってA面とB面を通して聴く。

しかしこれが2枚組.....。
C面を聴いてる途中でさすがにギブアップ。
完全になにかの拷問。
これを一日暗い部屋で流されたら
簡単に仲間の名前くらいは吐いてしまう。

おそるべしキース・ジャレット。

これほど盤質がピカピカの中古盤もなかなかお目にかかれない。
おそらくは前の所有者もほとんど針を落としていないはず。

このアルバムが愛聴盤だというひととは
仲良くなれそうもない。
まあそうはいないだろうけど。


LOTUS CALIFORNIA たなかひろし



それでは、西独ベネディクト修道院での即興演奏をおたのしみください