梅雨だというのに晴れが続く6月。
理由があって僕はまとまった雨が降るのを待っていた。
薔薇を救出するための秘密作戦の日の為に。
毎年、大切にしている庭の木のどれかが
なにものかに根を喰い尽くされ、
無惨にもぼろぼろのほうきのように力なく立ち尽くす。
敵はこがねむしの幼虫、
あの白いちいさなやつらが根をまさに根こそぎ喰い尽くす。
なんか元気ないな、なんて思ったときには時すでに遅く、
ほぼ瀕死の立ち枯れ状態。
今年もまた新たな戦いが始まった。
冬に植え替えたつる薔薇が、
ちいさめのつぼみをたくさん付けたところまでは良かった。
つぼみの開きがなんか悪いな...。
怪しいなと思って根元つかんでみたらぐらぐら...。
いつもは仕方なく引き抜いて、
テラコッタに移し替えて養生、3年は我慢。
今年の僕は、ただ耐え忍ぶ農民ではない。
用意していた生物兵器を携えこぶしを上げる。
この最終兵器の弱点は紫外線。
作戦は雨の日に決行する。
しとしとと降る雨、
気温も25度を超えている。
待ちに待った決戦の日。
冷蔵保存していた線虫を日陰で水に溶き、
根鉢を作った根元にたっぷりと撒く。
数万頭の線虫たちが地中をうごめき、
幼虫の体に無言で忍び込み喰い尽くす。
一分の容赦もなく。
僕の薔薇をかけた聖戦は始まった。
たなかひろし ロータスカリフォルニア