2012-06-08

LISTEN BEFORE YOU KICK THE BUCKET. /ごく私的な名盤紹介VOL.1/30



定期的にレコードラックから引っ張りだして聴くレコードがある。

f:id:lotuscalifornia:20120608182211j:image

いくつかの音楽にはまったくの個人的な思い出が
壁のしみのように絡み付いている。

学生時代、
僕が母校の小学校に教育実習で通っていたときに
知り合った女性があるとき、
“田中くん、音楽、何聴くの?”
“うーん、ビートルズとかスティービー・ワンダーとか...。”
“クラシックはどうもあんまり...。”
(その頃の僕は、学校の先生はクラシックが好きだと思い込んでいた。)
これ、聴くといいよと手渡されたカセットテープがある。


もらったカセットをウォークマンに入れて聴いてみた印象は、
ん? なんかゆるいな...。
カントリーミュージック? フォーク??? 


週末はディスコの大音響の中で過ごしていた当時のたなか青年には
宿命的に音圧と刺激の足りない音楽だった。
せっかくもらったカセットもほとんど聴かないままに
車の中に放り込んだまま数年がたった。

その後数年の間に、
たなか青年はジャズを熱心に聴くようになり
レコード屋に足繁く通ういっぱしの音楽ファンになっていた。
ある日、
車のなかからガサガサと何気なく取り出したテープには
MARIA MULDER/OLDTIME LADYと書いてあり
自分の記憶にはないものだった。
カーステレオに突っ込んで、車のなかに満たされた音楽の心地良さに
僕は車を走らせることを忘れて聴き入った。

ジャズを聴き続けて大人になった僕の耳には
とても美しく魅力的で豊かな音楽だった。
なんでその頃この良さがわからなったんだろうと後悔した。


まだ青かった年の頃のことを
このレコード聴くと思い出す。

ロータスカリフォルニア たなかひろし


D